BLUE 2000.11.06
碧い魚が泳いでいる
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底を臨む
光りの届かない場所
覚えていた
わたしは未だ、それを
忘却するにはあまりに深く
追憶するにはあまりに酷い
蒼然とした景色
帝都の庭園より豪奢な
色褪せた影の舞台
在るはずのない青薔薇
附随して見えた空の色
記憶の海に浮かぶ
浮標はこんなにも鮮やかな
淡く澄んだ碧
臨まなければ見落とした碧
拡散がっていく碧
佇む中に視認えた碧
空からこぼれた断片
透る輪郭を広げ波紋を飛ばす
それは静かに泳ぎ出し
碧い魚は静かに泳ぎ出し
鱗を銀に輝かせ
.
.
..
無を望む
祈りの届かない世界
言葉を忘我の彼方に
絶えて久しい望郷の念
夢のごとき御伽話の続きなど
背後をとられた不覚に等しく
憶い出を潰されていく
抑圧された意識の緩和
銀は自由の象徴
束縛からの解放
無世界への逃亡
初めての始まり
截然した今と過去とを
ひとつの記憶に束ねる
祈っても何も変わらず
背を地に預け見えた空
銀世界、一面の白
浮び上がるように碧
天だけは支配できずに
碧の見下ろす銀世界
陽の降り注ぐ
微粒子の大地
虹色の光りを
跳ね返す白さ
夢より綺麗なプロローグ
流れるように揺れる影
世界の中に輝きを落とし
優雅に泳いでいく
鱗を銀に染め上げ泳ぐ
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