父と母と私。写真の中の幸せな家族。
写真の中から笑いかけてくれる父に、リリーナは微笑みを返した。
「驚いて、お父様? 私、男の子を追いかけてこんな所まで来てしまいました。だって彼、すぐにいなくなってしまうのですもの。お父様にこの気持ち、わかっていただけるかしら」
かすかに写真の父がうなずいた錯覚に捕らわれ、それでも嬉しくなってリリーナは写真をフォトスタンドごと抱きしめた。
「お父様……」
目を閉じ、父の姿を思い浮かべる。いつだって私に優しかった父。
その時、小さな轟音とともに、軽い光が、まぶたの裏まで伝わってきた。驚いて顔をあげると、窓の向こうが明るく輝いていた。
それが夜空に映える炎上するものだと気付くまでに、しばしの時間を要した。
よく見ると、海の上で何かが炎上していた。確かあの辺りにはOZの要塞があったはずだわと、頭の隅の知識を引っぱり出した。
そして、”彼”が今あそこにいるのだと直感する。
「ヒイロ……戦っているのね」
今はあなたの事がわかる。あなたが戦う理由がわかる。私もOZは憎い。
けれど、それだけでは駄目なのですね。私……。
リリーナは、夜空を焦がす炎の中に、2つの小さなシルエットを見たような気がした。この任務が終ったら、ヒイロはまたどこかへ行ってしまうかもしれないと言う不安がよぎる。自分の知らない場所へ、自分の手の届かない場所へ、ヒイロは行ってしまうかもしれない。
そんな不安につられたように、想いが自然と言葉になる。
「もう少しだけ一緒にいさせて。あなたと同じくらい強くなれそうだから」
その瞳は、深く静かな強さを持つ者の証を秘めているかのように、まっすぐ目の前だけを見つめていた。
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