沖合いの海から要塞が事実上消えた明くる日。学園はその話題で持ちきりだった。
「すごいよねぇ。私、最初の爆発見ちゃったよ」
「俺なんかガンダムのシルエット見たぜ」
「嘘! あれってホントにガンダムなわけ?」
「やっぱヒイロ君とデュオ君かなぁ」
「すっげぇ〜」
「えー、怖ェよ、それ」
生徒たちは言いたい放題である。事実、ヒイロはすでにデータ改ざんを済ませて転校していってしまった。今頃どこかで任務完了の高笑いでもしているのだろうかと、デュオは皮肉めいた事を考えた。
デュオはまだ留まっていた。学園生活はそれなりに楽しいし、デュオまで転校したらそれこそ噂を肯定する事になる。次の指示が何もない今、わざわざ転校するまでもないと思っていた。
「おい、あれ、お前がやったのか?」
「俺なら5分で片付けるな」
「全然答えになってねーよ」
「その言い方がいかにもプロ〜って感じだよねー」
「そうかぁ。そりゃどうも」
生徒たちの冗談らしからぬ質問を軽くあしらい、自分もかつて要塞だった場所を見つめる。
「しかしハデにやってくれたなぁ」
完全に他人事である。
「OZが怒って攻めて来ないかな」
「ばーか。ンなはずないだろ。奴等だってそんな暇じゃないはずだ」
不安気な生徒たちを笑ってなごませようともする。嘘の中に真実を隠して、昨日と同じ空を見上げた。雲一つない碧壁の中を、1機の飛行機が横切っていくのが見えた。
「ヒイロ……あなたはどこへ行ってしまったの……」
隣りでつぶやかれたお嬢さんの声を聞き流しながら、空に描かれた飛行機雲を、目で追った。
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