海が赤く染まり、太陽が水平線に浸かった。東の空からやってきた夜が、次第に星々を浮かばせはじめた。
「そろそろかな」
デュオは腕時計に目をやった。針は指令より早い時刻を差していたが、ヒイロを出し抜くにはこのくらいの余裕は許されるだろうと自分に言い聞かせる。当の本人が来るかどうかも危ういというのは、出し抜く以前の問題であったが。
「あいつが、任務をすっぽかすはずないよな」
不安に駆られながらもデュオはいつもの服に着替えると、自室を抜け出した。隠してある愛機のところまで一気に駆け、コクピットに乗り込む。システムを起動させると、そのまま海上要塞へと向かった。
自慢のステルス機能は今日も抜かりなく、レーダーに映ることなくデュオは簡単に潜入できた。基地は、静まりかえっていた。
「へへ。俺のほうが早かったぜ」
ビームサイズの出力をあげると、一番近くにあった高炉に斬りつけた。一瞬後、爆発音とともに、それが炎上する。間もなくして、そこは警報のサイレンが鳴り響き、あわただしくなりはじめた。MSも出てきたが、混乱に陥った相手を叩くのはたやすい。
遅れて、よく知った機体が現われた。
「遅かったな、ヒイロ」
「あぁ」
デュオはほっと胸をなでおろした。内心、ヒイロが「共同戦線を張る必要はない。俺は一人で任務を遂行する」などと言い出すのではないかと心配していたのだった。
「さぁて、ここからはぐずぐずしてらんないぜ」
ヒイロが来たことでがぜん張り切りだしたデュオは、夜空に月が見えないことに気付かない。宇宙では墓場にしか見れないそれは、地球からだと美しい天体で、毎日ながめていたというのに。
「行っくぜぇ〜っ」
己の居場所ここにありとでも言うように、デュオは夜空に愛機デスサイズを舞わせた。それはさながら死神を連想させる。一方天使ウイングも負けてはいない。
死神と天使という奇妙な組み合わせの2機は、かくして一夜にしてOZ海上要塞を壊滅に追い込んだのであった。
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