ビームサーベルのたった一振りで、ノベンタ元帥以下平和提唱者達──連合とコロニーの平和の掛け橋になるはずだった人々が死んだ。
空は快晴だった。雨天決行の任務も、これならやりやすいと言うものだ。今夜なのだ。
デュオは、そんな空模様と裏腹に、昨日のヒイロの台詞を思い返していた。「謝って済むのなら、俺はこんなところにいない」の行くだりである。その台詞は自分に向けられたものだと受け取ったのだが、どうも釈然としなかった。
勝手な言い種だが、あれくらいの事でヒイロが腹を立てるとは、正直デュオには思えなかった。なんだか違う気がするんだよなぁと首をかしげる。
次は体育の授業だった。校庭へ走っていくときも、ずっと考えていた。何かが引っ掛かる。もしかしたら……。
その思考は、突然の笛の音に遮られた。体育科の教師が、大声でチーム別けをしていた。そういえば今日はバスケの試合ゲームをやるって言ってたよなと思い出す。斜め前にヒイロが見えたが、そのヒイロが名前を呼ばれてチームに別れていくのも見えた。
「マックスウェル! Cチームだ」
不意に呼ばれた自分の名前を聞き流してしまいそうになる。あわててそのチームが作る列の最後尾に並んだ。目の前に、ヒイロの背中があった。ふと先程の続きが、頭に浮かぶ。もしかしたら……こいつは、まだあの事を引きずっているのかもしれない。あれは自分自身への自嘲の台詞だったんだ……。
声を掛けようにもタイミングを逃してしまい、何も言えなかった。じきに試合がはじまった。デュオは今はバスケに集中しようと、積極的にボールを追いかけた。多少手加減はしているものの、幾つかシュートを決めてやった。
何度目かのパスにボールを受け取った時、ドリブルし始めるより早く、行く手を遮られた。辺りを見渡すとコート端の、ゴール付近にただ立っているだけのチームメイトを見つけた。
「ヒイロッ!」
叫びとともに渡されたパスを難なく受け取り、いとも簡単にダンクを決めて、そいつはコートから立ち去ろうとした。デュオは慌てて後を追った。
海風が気持ちいい。2人は体育着のまま、学園のベンチから海のほうを向いていた。OZの海上要塞が見える。先に口を開いたのはヒイロだった。
「どういうつもりだ。目立ち過ぎる」
「お互い様だろ、それは」
受け流したデュオは、ピンクのリムジンが正門前で止まったのを見つけた。こちらに歩いてくるのは、以前ヒイロが殺そうとしていたお嬢さんだと記憶が告げた。
お嬢さん──リリーナは、ヒイロを見つけると微笑んだ。
「私、あなたに会いたかったの」
「はぁ?」
わけがわからず、デュオは今頃になって汗が吹き出るのを感じた。
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