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Don't Mind 第2話「廊下」 

「にしても、お前が学生してるなんてなぁ……」
 デュオがため息を洩らした。

 ここは学園にある寮の一部屋。ヒイロの個室だった場所だ。と言うと語弊があるかもしれないが、要はデュオが転入してきたおかげで、2人部屋になっただけの話だ。
 部屋は狭い。個人用であったから、机も椅子もベッドも一つずつしかない。寮にある部屋がすべて満員であったため、急に転入してきたデュオを迎え入れる場所スペースがなかったのだ。
 そこで、部屋があくまで、とりあえず知り合いらしいヒイロの個室へお邪魔させていただくことになったのだ。

 くり返すが、個室だったからベッドは一つしかない。2人で一緒に寝るのには狭すぎるベッドだ。だからデュオは、借りてきた布団を床に大きく広げ、その上に思いっきり寝転がっているのだ。
 時刻は11時半。消灯時間の10時はとっくに過ぎていたが、そう簡単に寝るつもりがないデュオだった。しようと思えば訓練された身、何日でも徹夜はできる。1日くらい寝なくともなんともないのだ。
とは言え、欠伸あくびは勝手に出るもので、デュオは目に涙を浮かべた。

「うーん。ちょっと眠イかも」
「…………」
 ヒイロは答えない。ベッドで壁のほうを向いたまま、ぴくりとも動かない。もしかしたら、本当に眠っているのかもしれない。寝息を立てずに。
 ヒイロならできないことじゃないとデュオは思う。けれど相手が寝てないと確信できる。あのことを考えているに違いない。心の中で自分を悔やんでいるに違いない。そう確信できる。
「なぁ、気にすんなよヒイロ。あれは不可抗力だったんだ」
「……」
「言うなれば俺にも責任あるんだぜ。お前を止めるつもりなんかなかっ
たし、俺自身、狙ってもいたんだからな」
「……」
「ばーか。一人で抱え込むなって、ガンダムのパイロットだってミスくらい……」
「黙れ、デュオ」
「……何ィ!?」
 ヒイロが起き上がり、こちらを振り向く。
「せっかく人がなぐさめよーと……」
「黙れと言っているんだ」
 小声で囁いたヒイロは、部屋の入り口を見つめる。はっとして、デュ
オはすばやくドアに近づくとノブを回して一気に開放した。

「きゃっ」
 その場にいたらしい2、3人の女生徒たちが、髪を揺らして逃げていくところだった。
「やべ。今のって、立ち聞きされたのか?」
「お前がおしゃべりなだけだ」
「あぁはいはい。さいですか」
 とりあえず、2人は今夜は寝付くことにした。






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