地球から飛び立ったL4行きの定期シャトルの中に、一人の少女が乗っていた。彼女は一時期、地球圏の女王クイーンにまでなったが、今は外務次官として地球とコロニーを往復していた。一昨年の12月下旬、マリーメイア紛争と俗に呼ばれるクーデターの後に、地球圏の大統領選挙があった。彼女はその立候補者の一人であり、熱烈かつ有力な支持も多かったのだが、当時16歳という若さのために落選していた。それでも外務次官としての働きはめざましいものがあり、2年後に予定される次の大統領選での当選は確実だろうと噂されている。
A.C.200年の12月といえば、アフターコロニー歴最初の世紀末であり、そんなときに史上最年少の大統領が誕生することは、新たな歴史の幕開けに相応しいと、誰もが夢や希望を膨らませていた。
今から大きく期待されるそんな彼女も、ここ一週間、休暇をとっていた。もうすぐ誕生日だからという理由で、地球圏統一国家情報部プリベンターの者達が無理矢理休暇をとらせたのである。そしてL4でも名高いウィナー家の若い当主が、自分のところで誕生パーティを催すから是非来てほしいと、彼女を誘ったのだった。パーティには、若き当主がかつての戦争で得た戦友達も招待されることになっていた。
彼女を乗せたシャトルは確かにL4へ向かっていたのだが、乗客には何も知らされずに途中で行き先を変えた。操縦室パイロットルームには、いつの間にか4、5人の武装した男たちの、銃を構えて指示を出す姿があった。まもなくして定期シャトルの運行を見守るセンターで、そのシャトルの現在地を示すランプが消えた。
それから5分と経たないうちに、センターの人々はそれが故障でないことに気付いた。リリーナ・ドーリアン外務次官の乗ったシャトルが、何者かによって強奪ハイジャックされたのだった。
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