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ただ、私は。 其処に立つ者は。
歩いて、歩いて、息が乱れる程に進んで、 振り返って、 溢れる塩水の中に何もない地平が見えた。 ただ、私は。 待ちたかっただけなのだろう、 陽炎の向こうにゆらぐ白い境を 越えてやってくる 鳥。
其処に立つ者は、 目を閉じて 鳥を喚ぶ。 ただ、私は。 喚ばれるだけの鳥。 貴方の声が聞こえる。 貴方の姿は見えないけれども。