暗がりに淡く浮かびあがるモニターの前に、鼻歌が流れる。栗色の三つ編みを無造作に背に流して、自称・嘘は吐かないデュオ・マックスウェルはいつものように偽のIDを使って端末を操作している。
他愛のない作業だ。
物音一つない室内に、デュオのご機嫌な鼻歌と、キーを叩く音だけが静かに響く。
L1コロニーで間もなく行われる式典に、OZの上層部が出席するという。目的は分からないが、身分を偽って、潜入するのも悪くない。何か新しい情報を掴めるかもしれないし。
何度目かに画面が移ったとき、それは起きた。
ビー!
「は? なんでだよ」
ERROR、と古風な書体ではじき出された画面に、半分あきれながらデュオは思わず毒づく。
デュオ・マックスウェルという名前の人間が、既にそのコロニーに存在しているという。
「…やりやがったな」
そんなことをする人間は、デュオの知る限り一人しかいない。
コードネームだかなんだか知らないが、やたら有名な名前のせいでコードネームの意図を成してないあいつだ。
「だからってオレの名前なんか使っちゃってさ」
他の名前の候補を打ちながらふと、デュオはそいつの潜入の記録なんかを探すことを思いついた。名前は使えないけど、他に利用できるものがあるかもしれないし。
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