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 独りは怖くないか?
 誰かに頼りたくならないか?
 君のそばにはほら、仲間がいないんだし

 心配そうにのぞきこんできたあの男は、今頃どうしているのだろう。
 顔はもう覚えてはいない。
 いつのことだったのかも定かではない。
 夢だったかもしれない。
 ぬくもりは忘れてしまったから。

 星を感じさせない街明かり。
 ゆき交う人々は笑い、通り過ぎていく。
 狭い裏通りで独り、そんな夜を眺めてる。みじめな自分の古い記憶。あの街はもう、戦火に巻き込まれてしまっただろうか。
 嫌いではなかった街の匂い。もう嗅ぐこともない。記憶の中だけにある遠いネオン。
 戦争を知らない大人たち。
 自分のことに精一杯で、被害がなければ知らんぷり。みんな同じ。どこかで誰かが死んでいっても、それは知らない誰かだから、心が痛くなったりしないから、見て見ぬふりしてる。陽気にはしゃぐことができる。








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