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背を向けるまで














 死に神がオレたちに背を向けるまで、
やっぱオレたち笑っちゃいけないんだと思うんだよ。

 6年前のあの日、
オレたち笑っただろ。
おまえだって笑っただろ?
地球っていう知らない場所、でも遠い故郷、憧れてたのは確かだろ?
でも見てみろよ。
そりゃ思った以上に大きかったし自然て不思議だったけど、
人間がフツーに暮らしてた。
なんか可笑しくなかったか?
コロニーと変わんない人種が暮らすこの星で、
オレたちが戦争おっ始めようとしてたこと。
自分の愚かさが可笑しくはなかったか?

 おまえがオレを知らなかった頃、
オレがおまえを知らなかった頃、
互いに自分一人だけだって思ってた頃、
そんなあてのない戦いを笑ったことはないか?
自嘲ってやつ。

 笑うなんて、そんな余裕も油断も大敵。
死に神がオレたちに背を向けるまで、
やっぱオレたち笑っちゃいけないんだと思うんだよ。
自分のことに精一杯で。

 でもさ、今は笑ってもいいだろう?
戦争は終わったんだ、一応は、な。
ちょっとくらいの平和に有り難み覚えるくらい、どってことないだろ。
忘れたのかよ。
ほんのすこしの休息が、どれだけ有り難く思えた時期があったのか。
だからさ、今は笑って過ごそうぜ。
そのうちまた戦が始まって、死に神が戻ってくるまでの間。
オレたちがこの安穏に背を向けるまで、
まだ当分あると思うんだけど。
そうだろう、ヒイロ?
だから遠慮なんかするなよ。
少しくらい過去を忘れたって、バチあたんないと思うぜ。

 だから海へ行こう。
ほんの少しの潮の香をかいで、この星に来た最初の日を思い出して、
そしてそれは波に流して捨ててしまおう。
コロニーへ戻れないひな鳥達は、人間に拾われるわけにはいかないから。
母鳥に嫌われないように、自分の翼で飛び上がろう。
巣へ戻れば、兄弟達が待っている。

















 なあヒイロ。地球を捨てて、コロニーへ戻ろう?
オレたちの翼は、もう、どこにも無いけど。






























背を向けるまで あとがき

 メテオ記念日イヴに書いております。予定準備期間が短過ぎたようで、あちこち中途半端なまま明日に突入することでしょう(汗)。
 この小説も即席。何か更新せねば…と書いてたら、台詞だけのものが完成。一応メテオ計画ネタです。かーなり苦しいですが…。続きそうな勢いを感じるのは自分だけではないはず(ぼそ)。

 とりあえず時間だけは持て余せる身分になりましたので、ちょくちょく更新を目指したいところ。今月中にもう一本なるか…!?

(2001年4月6日。入学式まであと三日…






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