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 月を裏側から追い抜いて、碧くみずみずしい惑星ほしへ向かう。それは本当に神秘的で、あんなところで戦争やってた頃の自分が、なんだか莫迦らしくなってくる。

「そういやお前、なんでわざわざL2まで来たんだ?」
「サリィ・ポォに頼まれた。リリーナを救出しろと」
「じゃあお嬢さんに会いに行かなくていいわけ? Dエリアのコロニーにいるんだぜ」

「‥‥‥かまわない」

 ふぅんとデュオが答え、会話がそこで途切れる。しばらく沈黙が続いた。

「方程式‥‥‥」「明日‥‥‥」

 二人同時に喋り出し、いきなり黙る。見かねたデュオが先に切り出した。

「あのな‥‥‥、俺が捕まる。お前が来る。二人一緒にそこを逃げ出す。簡単な方程式みたいだなーって思った。2年前の戦争ん時と変わんねぇ方程式。‥‥‥ほら、お前の番バトンタッチ

「‥‥‥明日、指導者ヒイロ・ユイの22回めの命日がくる」
「え、それってオペレーション・メテオ発動からちょうど2年ってことじゃねぇか」

「地球だと、場所によってはすでに今日だな」
「そりゃ何処だ?」
「東アジア地区エリアJAPポイント。俺が到達した地点」

「って‥‥‥俺とお前が最初に出会ったとこじゃねぇの。そうかぁ」

 ヒイロがあきれた顔を見せるが、デュオはそんなことであきらめたりしない。

「行こうぜ、青い惑星ほしへ。母なる地球だいち、俺たちの降り立ったあの場所へ」

 初めて本物の大地を踏んだ日から、もうすぐちょうど2年になる。あの頃と変わらない海も陸も空も、なんだかすごくなつかしい。戦いのあったことなど微塵も思わせない澄んだ大気そらが、真下に広がっている。

 二人は、あのときのように流れていった。隕石メテオのごとく、なつかしき地球だいちに誘いざなわれて。










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