了 奔走の人馬
権威ある書いはく、水は決して触ることはできない。.
目に見えて、側にあって、感じることはできても。.
それを掴むことも抱くことも、寄り掛かることもできない。.
何故なら水は神の化身で御座しまし、.
我々は神に見捨てられ給うた仔羊であるからだ。.
神は我々のことなど御覧にならず、.
故にすり抜けてしまわれるのだ、と。.
それが本当だとしたら、今在る我々は何者なのだろう。.
一人歩きを許された赤児か、.
それとも一人立ち行かねばならぬ旅人か。.
いずれにしても、我々は一人で行かねばならない。.
たとえ視界の果てまで広がる闇を前にしても。.
見えぬ壁に四方を覆われ身動きさえ叶わなくても。.
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たとえ誰も来なくても、狼少年のような後悔などしない。.
初めから見放されたことを知っている羊は.
たとえ狼の姿を見ても怯まないだろう.
助けを請うこともせず、一頭だけでも走り出すだろう.
雨の中を.
流星群のように虚しい、絶えまない雨の中を.
神が唯一我々に賜うた救い.
神の化身たる雫.
心につまる声にならない叫びを洗い流す.
頬を伝わる塩辛い雨の中を.
>>> das Ende...