⇒目次に戻る



 師馳     エピローグ 



 夢を見ていた。.
 やわらかい揺りかごの中で眠り続ける夢を。.
.

 聖歌が聞こえる.
 誰が歌っているのか、透き通るような声.
 ガラスのような脆さを感じて手を伸ばせば.
 それは簡単に砕けてしまう.
.

 輝く幾千もの小鳥が、天へと昇っていく.
.

 美しい黒い輝きを持つ髪が揺れた。その下に瞬くは海の底のような紺の瞳。.
 初めて覚えた独占欲。.
 手放したくないと、心が叫ぶ。.
 くすんだ金髪を束ねた女性が歩いていくのが見える。.
 待って、と呼び掛けても戻ってはこない。.
 一度だけ振り返り、その人の翡翠の瞳が言う。.
 幸せになれ、と。.
.
.
.

 壊れやすいガラスの美しさを.
 何故ヒトは望むのだろう.
 触れれば砕けてしまうもろい安らぎを.
 何故ヒトは守れないのだろう.
.

 輝く幾千もの小鳥が、天へと昇っていく.
 その先にあるのは楽園か、自失か.
 それとも何もないのか、終わった後には.
 光を求めるのは生きている者だけに許されるのか.
.

 輝く幾千もの小鳥が、天へと昇っていく.
 蒼窮に広がる自由な想いを求めて.
 ここにはない、全ての終わりを目指し羽ばたく.
.

 翼なき者に許されるのは.
 影落とす両の足でしかと大地を踏み締め歩くこと.
 前へと .





      >>> das Ende...